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中島ゆうあ@電子書籍作家

中島ゆうあ(優 空)*マリクロ|電子書籍総合出版社 作家ブログ*
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♯2 Doki☆Doki
「ねえ、もう少し近くにきてよ」


わたしの突然の“申し出”にあなたは少し戸惑った顔をする。


 どうしてそんな顔をするの?
 何か変な事言った?


困り顔で見つめるわたしに、あなたは小さく肩を落とした。
それから遠慮がちにすりすりと近寄って来た。


「もっと近くに」


わたしは体を捩じらせて、あなたを迎える準備をした。
いそいそとあなたがわたしのぴったり真横にやって来る。


「やっと来てくれた」


あなたの腰に腕を回して、あなたとあなたの匂いを抱き締める。


「こうしてると落ち着くわ」


わたしの言葉に水を差すようにあなたが小さなため息をつく。


「これじゃあ、俺が落ち着かないよ」


わたしの胸がチクリと痛む。


「どうして?」


わたしの質問にあなたは答えない。


「ねえ、どうして?」


わたしの頭に顔をうずめて、あなたはもごもごと何か言った。


「聞こえない」

顔を上げて、あなたの目を見つめた。

「何て言ったの?」


わたしの目の前が突然真っ暗になった。
あなたの手がわたしの視線を遮る。


「そんな風に見るなよ」


あなたの姿が見えないまま、わたしはあなたの頬にそっと両手を置いた。


「わたしに見ないでってお願いしているの?」

「そうだ」

「その上、抱き締めると落ち着かないから嫌って言ったの?」


あなたは少し間を置いて、「そうだ」と答えた。


「あなたの嫌がる事は出来るだけしたくないけど……本当に嫌なの?」


わたしは努めて沈んだ声であなたに訴えかけた。
ゆっくりとあなたの手が降りていき、わたしの目が数秒振りにあなたの顔を捕えた。


わたしの手の中であなたの頬は何か言いたそうにもごもごと動いている。
わたしは何も言わずにあなたを見つめる。


「ドキドキして落ち着かない」


吐息まじりの小さな“告白”にわたしの頬が弛む。


「ドキドキしてくれるの?」


あなたの視線はわたしの顔の上をゆっくりと泳ぐ。


「ねえ、ドキドキしてるの?」


わたしはそっとあなたの左胸に手を当てた。

ドクン……ドクン……ドク・ドク――
小さいけど力強いドラムの音がした。

クスッと忍び笑い。


「ホントだ。
 かなりドキドキしてる」


あなたはわたしの手を払いのけようと右手を上げた。
その手を掴み、わたしの左胸に押し当てた。


「わたしだって、ドキドキしてる」


あなたはわたしの胸に手を置いたままわたしを見つめて、微笑んだ。
わたしの胸のドラムが更に激しくビートを刻み始めた。
あなたの眉が少し持ち上がった。


「これが、落ち着くのよ」

「どうして?」


あなたは不思議そうな顔をしてわたしを見ている。


「あなたがいるから」


わたしの言葉にあなたは首を傾げた。
わたしはそんなあなたがたまらなく愛しいと思った。


「愛する人と一緒にいることは素敵なことでしょ?
 そういう時はドキドキするでしょ?」


あなたはこくりと頷いた。


「だから、ドキドキするのは素敵なことなの。
 素敵なことを毎日経験できるって凄く贅沢じゃない?」


あなたはまたこくりと頷いた。


「でも、それって贅沢だけど、実はささやかな幸せだったりするじゃない?」


あなたはまたまたこくりと頷いた。


「愛する人が傍にいて、毎日ドキドキ……愛してるって感じられる。
 そして、幸せだなって思える。
 あなたがわたしの幸せそのものなの。
 その幸せをぎゅって抱き締められるなんて、最高の幸せよ。
 わたしだけに許された最高の幸せ。
 分かる?」

「だから、落ち着くって?」

「そう。わたしは今日も幸せ! ってね。
 でも、あなたは嫌なのよね?」


唇を少し尖らせて、あなたがわたしに無言の抗議をする。


「ドキドキするのが落ち着くの。
 変だけど、そうなの。
 あなたもそう思ってくれたら嬉しいんだけど……」


わたしは甘えた猫なで声であなたに最終攻撃をした。

あなたは諦めたように肩を落とし、ニッコリ微笑んだ。
それから、わたしの肩にそっと腕を回してきた。

わたしはそっとあなたの胸に寄り添う。
そして、わたしも腕を回して、あなたに抱きつく。


「ドキドキしてるの分かる?」


頭の上で、あなたが頷くのを感じた。


ドク・ドク・ドク・ドク――


幸せのビートを刻みながら、幸せを抱き締める。
幸せに抱き締められる。
至福の一時。


「ドキドキするって……幸せだね」

「そうでしょ?
 落ち着くわよね?」

「うん……とっても落ち着くよ」


あなたの言葉を受け取って、わたしはあなた――幸せ――を誰にも奪われないようにきつく抱き締めた。



 ねえ、怒らないでくれるかな?
 
 落ち着いた次には、
 あなたのキスを待って、その先も待って……
 そわそわするくらいドキドキしてきちゃうんだ。
| ShortShortStory | 08:35| - |
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